福島地方裁判所 昭和35年(わ)10号 判決 1960年3月19日
被告人 渡辺和彦
決 定
(被告人氏名略)
右の者に対する業務上過失致死傷被告事件について検察官中村三次から刑事訴訟法第十九条に依る移送の請求があつたので当裁判所は弁護人飯沢高の意見を聴いたうえ左のとおり決定する。
主文
本件を宮崎地方裁判所都城支部に移送する。
理由
本件移送申立の要旨は右被告人に対する業務上過失致死傷被告事件は当庁に係属中であるが、本件の審理については証人を立会わせ現場の検証をなす必要が予想されるところ、その場所は遠隔で証人となることが予想される者も犯罪地附近に居住しているので本件は犯罪地を管轄する宮崎地方裁判所都城支部において審理するを相当と思料するので同支部に移送相成度というにある。
仍て記録を査するに本件は昭和三十五年一月七日前記支部に公訴提起されたが被告人は事件後当裁判所の管轄地である福島県信夫郡吾妻村庭坂鉄道建設木村班飯場に移住して居り、右支部は同年一月三十日付をもつて刑事訴訟法第十九条に依り本件を当裁判所に移送する旨の決定をなし、当庁は昭和三十五年(わ)第十号事件として之を受理し、同年二月二十九日被告人出頭して第一回の公判を開廷したところ被告人は公訴事実中注意懈怠の点を争い、不可抗力を主張し(弁護人も同様)従つて将来証拠調に際しては、現場の検証及び証人の尋問を必要とすること明かであり、而も現場は右支部の管轄地内であり、証人も同地内に居住する趣(当庁検察官の調査に依る)にて此の際極めて遠隔に在る現場の検証等を当庁より出張して実施(その為には被告人を立会わせることが必要である)することは種々の見地より甚だしく不適当で事件を右支部に移送のうえ被告人の身柄を確保(例えば被告人は既に記録添附の手紙にあるとおり右支部に出頭する経済的余裕がないので召喚に応じない虞があるものと認めて勾引の手続を取る等の方法に依り)して審理を行うことが却つて訴訟経済の趣旨にも合致するものと思料するので茲に刑事訴訟法第十九条に依り右支部に移送を為すことにする。
よつて主文のとおり決定する。
(裁判官 菅野保之)